越境ECで海外への販路拡大を検討しているなら、海外発送の方法や通関手続きについて理解しておくことが重要です。
海外輸送で利用される貿易取引条件の一つに「DDP」があります。DDPでは、販売者の負担が大きくなる一方、購入者の負担を軽減できる点が特徴です。また、輸出先の国や地域、利用するプラットフォームや物流会社によっては、DDPでの発送が求められる場合もあるため、事前に条件を入念に確認しておくことが大切です。
この記事では、DDPの仕組みや発送の流れ、販売者と購入者それぞれの責任、メリットとデメリット、注意点について解説します。海外販売でDDPを利用する際のポイントを理解し、ヨーロッパをはじめとする海外市場への進出や国際取引に役立ててください。

DDP発送とは
DDP(Delivered Duty Paid:関税込み持込渡し)発送とは、国際取引において、販売者が指定された仕向地までの商品輸送にかかる費用とリスクを負担し、輸出入通関を行うとともに、関税や輸入税などを負担する貿易取引条件です。
DDPは、国際商業会議所(ICC)が定める貿易取引条件「インコタームズ(R)2020」の規則の一つで、航空、海上、陸上、鉄道など、輸送手段を問わず利用できます。
関税対象品目や輸入規制などは国や地域によって異なり、変更される場合もあります。DDPを利用する際は、 輸入先の国や地域の情報を確認し、関税政策について常に最新情報を入手し、必要な手続きや費用を把握しておくことが重要です。

DDPが義務化される条件
国や地域でのデミニミス(非課税基準額)の制度が変更されたことなどを背景に、越境ECプラットフォームや配送サービスでDDPが求められるケースがあります。例えば、eBay(イーベイ)では、米国やEU向けの発送について、特定の条件でDDPが必要とされています。
DDPの要否や条件は、発送元の国や地域、商品価格、利用する配送サービスなどによって異なるため、自社で利用しているプラットフォームや配送サービスの最新の規約を確認しておくことが大切です。DDPが求められる主なケースは以下の通りです。
- 米国への発送:eBayの規定では、日本および韓国から米国へ商品を発送する場合、2025年10月17日以降、商品単価が2,500米ドル(40万円)未満の貨物について、DDP物流サービスの利用を求めています。
- EUへの発送:2026年7月1日からEUでは150ユーロ(約27,750円)以下の輸入品に対する関税免除が廃止されました。eBayを利用してEUへ発送する場合は、利用する配送サービスや仕向地によってDDPが求められることがあるため、最新の条件を確認しておくことが重要です。

DDP発送の流れ
DDP発送は、一般的に以下のような流れで行われます。
- 取引条件を確認する:DDPの適用について購入者と取り決め、商品詳細や支払い条件、輸送日程、指定仕向地、リスクの移転時点など売買契約書に記載します。
- 商品を梱包する:輸送中の破損や水濡れを防ぐため、商品に応じて緩衝材や防水対策などを施して梱包します。貨物保険への加入はDDPでは義務ではありませんが、必要に応じて貨物保険に加入します。
- 輸出に必要な書類を準備する:インボイスなどの通関書類を作成し、必要に応じて商品への添付や電子データ送信を行います。輸出通関に必要な手続きや費用は販売者が負担します。
- 運送業者を手配する:販売者が運送業者を手配し、商品を引き渡します。指定仕向地までの輸送費は販売者が負担します。
- 国際輸送を行う:輸出通関完了後、商品は貨物船や航空機などで到着国まで輸送されます。
- 輸入通関を行う:到着国で輸入通関を行い、関税や輸入税、通関手数料など輸入に必要な費用を販売者が負担します。
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指定仕向地まで輸送する:到着国での輸送を手配し指定仕向地まで商品を届けます。
商品が指定仕向地で荷降ろし可能な状態となり、買主の処分に委ねられた時点で、商品に関するリスクが販売者から購入者に移転します。 - 商品を荷降ろしする:購入者が指定仕向地で商品を荷降ろしし、その費用を負担します。

DDP発送とDAP発送の違い
DDP発送と類似した貿易取引条件に、DAP(Delivery at Place:仕向地持込渡し)があります。どちらも販売者が指定仕向地までの輸送を手配し、輸出通関を行いますが、DDPでは販売者側が輸入通関を行い、関税や輸入税などを負担する一方、DAPでは購入者側が輸入通関を行い、これらを負担します。
DDP発送時の双方の責任
DDPでは、販売者と購入者で輸送や通関、荷降ろしなどの責任範囲が異なります。主な責任は以下の通りです。
販売者の責任
- 輸出用梱包:輸送中の破損などを防ぐため、商品を適切に梱包します。
- 書類作成:インボイス、パッキングリストなど、輸出入通関に必要な書類を準備します。
- 輸出入通関:輸出入に必要な通関手続きを行い、関税や輸入税、通関手数料などを負担します。
- 輸送:指定仕向地まで国際輸送および国内配送を手配し、その費用を負担します。
購入者の責任
- 荷降ろし:指定仕向地で商品を荷降ろしし、その費用を負担します。
- 追加の輸送:指定仕向地が購入者の施設でない場合、それ以降の輸送を手配し、費用を負担します。

DDP発送のメリット
販売者側のメリット
- 顧客満足度が向上する:通関手続きや関税、輸入税などに関する購入者側の負担を販売者が担うことで、より良い顧客体験を提供でき、リピート購入にもつながる可能性があります。
- 新規顧客を獲得しやすい:関税や輸入税などの負担を販売者側で負うことで、海外からの購入ハードルを下げられ、カゴ落ちの抑制も期待できます。
- 管理がしやすい:輸送業者や取扱業者を選定できるため、自社が信頼する業者への依頼や契約内容に応じたコスト削減が可能です。また、指定仕向地までの配送工程を自社で管理できるため、購入者側の手違いによる遅延や紛失のリスクも抑えられます。
購入者側のメリット
- 負担やリスクを軽減できる:輸送や通関などの手続きを販売者が行うため、購入者側の事務作業の負担を軽減できます。また、輸送中の遅延や通関上の問題が発生した場合も販売者が対応するため、購入者側の負担やリスクを抑えられます。
- 費用を把握しやすい:関税や輸入税などを販売者が負担するため、予期しない追加費用が発生するリスクを抑え、必要な費用を見通しやすくなります。
- 配送の見通しを立てやすい:販売者が輸送や通関を一括して手配するため、配送に関する手続きや流れを把握しやすくなります。輸入通関時に遅延やトラブルが発生した場合も販売者が対応するため、購入者側の負担を抑え、商品の使用や小売りなどの計画も立てやすくなります。

DDP発送のデメリット
販売者側のデメリット
- 通関で問題が起こる可能性がある:到着国の輸入通関手続きを熟知していない場合や変更があった場合などに、関税率の予測が外れて高額になったり、輸入規制に抵触したりするリスクがあります。
- 為替変動で経費が高額になる可能性がある:到着国の通貨が見積もり時よりも値上がりした場合、税金や諸経費が予測より高額になる可能性があります。
購入者側のデメリット
- コストが増加する可能性がある:販売者は予期しない手数料や追加費用に備えて送料を高めに設定することがあり、購入者が想定以上の送料を負担する可能性があります。送料が実際にかかった費用を下回っても、返金されないことがあります。
- 費用の内訳がわかりにくい:販売者が送料や関税、輸入税などの諸経費をまとめて提示したり、送料込みの商品価格を設定したりする場合があります。支払総額は把握しやすい一方、送料や各種費用の内訳を確認しにくくなります。
- 配送に時間がかかる可能性がある:コストを抑えるために、販売者がより安価な輸送方法を選択する場合があり、配送に時間がかかる可能性があります。また、配送状況に関する情報共有が十分でない場合もあります。
- 輸入通関で問題が発生する可能性がある:販売者が輸入通関を行うため、購入者の国の輸入通関手続きに不慣れな場合、通関に時間がかかったり、手続き上の問題が発生したりする可能性があります。事前に現地の輸入規制や通関要件を確認し、対応実績のある物流会社を選ぶことが重要です。
まとめ
DDP発送は、販売者が輸出入通関を行い、関税や輸入税、指定仕向地までの輸送を負担することで、購入者の事務負担や費用面の不確実性を抑えられる国際輸送方法です。販売者側の負担は大きくなりますが、購入者にとってスムーズな購入体験を提供できるため、顧客満足度の向上や新規顧客、リピート購入が期待できます。
日本のEC事業者が海外へ商品を発送する際は、輸出先の規制や利用するECプラットフォーム、物流会社の条件を確認し、DDPが適しているか判断することが重要です。特定の条件下ではDDPでの発送が必要になる場合もあるため、事前に必要な手続きや費用、責任範囲を入念に確認しておくことが重要です。
本記事や越境ECの完全ガイドなどを参考に、海外へのビジネス拡大を目指しましょう。
DDP発送に関するよくある質問
DDP発送とは?
DDP発送は、指定仕向地までの輸送や輸出入通関を手配し、関税や輸入税などを負担する取引条件です。販売者側の負担が大きくなる分、これらのコストが商品価格や送料に反映される場合があります。
DDP発送のメリットは?
- 輸送業者選定や配送工程を自社で管理しやすく、コスト削減やトラブル回避につなげられる
- 輸出入や配送手配などの負担を販売者が担うことで、顧客満足度の向上や新規顧客、リピート購入が期待できる
DDP発送が義務化される可能性が高い条件は?
- 米国への発送で、商品単価2,500米ドル(40万円)未満の場合
- EUへの発送で、商品価格が150ユーロ(約27,750円)以下の小口荷物など、利用する配送サービスや仕向地によってDDPが求められる場合
DDP発送で注意すべきことは?
仕向国の輸入者要件や通関手続きを事前に確認することが重要です。自社での対応が難しい場合は、DDPに対応した物流会社への委託も選択肢となります。




