NFTを活用した分野はデジタルアートやゲームなど多岐にわたり、アパレルブランドによるファッションへの応用も試みられています。
この記事では、NFTファッションの意味やメリット、企業の事例などを詳しく解説します。ファッションビジネスの新たな可能性を探りたい企業は、参考にしてください

NFTファッションとは
NFTファッションとは、衣服のデジタルデータをNFT化し、唯一性を証明できるようにしたものです。メタバースのアバターやゲームキャラクターの着せ替えアイテムであったり、現実のファッションアイテムに紐づいた画像や動画などの形で提供されます。
NFTとは
NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、日本語にすると「非代替性トークン」という意味を持ちます。外部からの改ざんが難しいブロックチェーン上にデータの所有者や取引の履歴を記録することで、これまではコピーが容易だったデジタルデータを、唯一無二の資産として証明できるようにする技術です。

NFTファッションが注目される背景
NFTファッションへの注目の背景には、NFT市場の広がりがあります。Fortune Business Insights(フォーチュンビジネスインサイト)の非代替トークン(NFT)市場レポートによると、NFT市場は2021年に投機的な盛り上がりを見せたあと、2022〜2023年にかけて取引が縮小しましたが、2024年からまた右肩上がりの成長を見せ始めています。日本市場については、2026年に9億2,000万ドル(約1,470億円)に達し、世界全体の約4.9%を占めると見込まれています。野村総合研究所の「NRI未来年表2025 - 2100」でも、出版・音楽・動画・ゲーム・アートの5分野を対象とした日本のNFT市場が、2025年の371億円から2028年には1,142億円に達すると予測されています。
特に注目されるのが、ゲーム内で手に入るアイテムなどをNFT化したブロックチェーンゲームの市場です。IMARC Group(アイマークグループ)のブロックチェーンゲーム市場レポートによると、世界のブロックチェーンゲーム市場は2024年の148億ドル(約2兆3,700億円)から、2033年には1兆1,728億ドル(約187兆6,000億円)へ、2025年から2033年にかけて年平均62.59%で成長すると見込まれています。
ゲーム内でキャラクターの見た目を変えるためのアイテムは、プレイヤー同士での交流が多いオンラインゲームで特に人気の高い機能です。ブロックチェーンゲームでは、こうしたアイテムをプレイヤーがNFTとして所有し、ゲーム内や外部プラットフォーム上で売買できる仕組みが広がっています。たとえば、Decentraland(ディセントラランド)では、独自トークンであるMANAを使って、アバターの衣服などのアイテムを取引できます。
ファッションブランドが、実在の衣服とNFTファッションをリンクさせる事例も現れています。たとえば、メゾン ミハラヤスヒロは、ブランドを代表するスニーカー製品をもとに、スニーカーのデジタルCGを作成し、NFT化しました。このNFTスニーカーは、NFTマーケットプレイス「KREATION(クリアーション)」で販売され、購入者には同じデザインのスニーカーが希望サイズで限定生産されました。
市場の成長を受けて、ゲーム内のアイテムから実物と連動した商品まで、NFTファッションの幅広い活用が試みられています。
※1ドル = 約160円で換算

NFTファッションビジネスに取り組むメリット
ファンとのつながりを深められる
NFTファッションの販売は、ブランドロイヤルティを強める手段になります。NFTは誰が保有しているかをブロックチェーン上で確認できるため、企業はブランドを応援している熱意のあるユーザーを認識できます。そのユーザーに向けて限定の特典などを用意するロイヤルティプログラムなどにより、結びつきをさらに強められます。
たとえば、NFTの保有者だけが新作を先行購入できる権利を与えたり、一般非公開のイベントに招待したりすれば、保有者は特別な存在として扱われていると感じ、顧客満足度が高まります。こうした体験は、ファンがブランドに関わり続ける動機になり、顧客維持につながります。
新しい収益の柱をつくれる
アパレルEC事業者やブランドにとって、NFTファッションは無形商品の販売という新しい収益機会になります。たとえば、NFTが実物の商品とひもづいた新しい購買体験はコレクター心理を刺激し、商品の付加価値を高めます。実物だけを売る場合よりも高い価格で受け入れられやすくなり、収益を引き上げられます。
さらに、NFTは二次流通市場で取引された場合も、その履歴がブロックチェーン上に残ります。この仕組みを使えば、再販されるたびに、売上の一部をブランドへ自動的に還元する設計ができます。実物の商品と異なり、二次流通を継続的な収入につなげられるようになります。
新しい顧客層との接点を持てる
NFTファッションは、これまでのファッション販売では届きにくかった層と出会うきっかけになります。たとえば、現実のファッションブランドがゲームやメタバースで使えるアイテムを販売すれば、これまでECサイトと実店舗では接点のなかったユーザーを取り込めます。
NFTやメタバースに親しんでいる層には若いユーザーが多く、今後の消費の中心となる世代です。多くのブランドがまだ参入していない段階で早めにアプローチしておけば、競合に先んじてこの世代との関係を築くアパレルブランディングにつなげられます。

NFTファッションの作り方
1. 暗号資産ウォレットを用意する
NFTコンテンツを作成する際に最初に必要なのが、暗号資産ウォレットです。これは、暗号資産やNFTを保管し、管理するための口座や財布にあたるもので、NFTファッションの発行や売買にも必要です。
暗号資産ウォレットには、大きく分けて、インターネットにつながった状態で使うソフトウェアウォレットと、ネットから切り離して利用できるハードウェアウォレットがあります。代表的なウォレットには、次のようなものがあります。
- MetaMask(メタマスク):世界中で広く使われている定番のウォレットです。イーサリアムをはじめとする多くのブロックチェーンや、主要なNFTマーケットプレイスに対応しています。ブラウザの拡張機能やスマホアプリとして無料で使えます。
- Trust Wallet(トラストウォレット):大手仮想通貨取引所であるBinance(バイナンス)が運営する、スマホでの利用に最適化されたウォレットです。スマホアプリで手軽に運用したい企業に向いています。
- Ledger(レジャー):USBメモリに似た形状のハードウェアウォレットです。機器の購入費用はかかりますが、ソフトウェアウォレットに比べて、不正アクセスや流出のリスクを抑えられるのが特徴です。NFTの売買や発行をする際は、MetaMaskなどのソフトウェアウォレットと連携させたうえで、マーケットプレイスと接続する必要があります。
利用すべきウォレットは扱う資産の規模やセキュリティの方針によって異なります。導入初期は、利用者が多く情報も集めやすいMetaMaskを選ぶとよいでしょう。なお、ウォレットを使う際は、復元用のシードフレーズ(秘密の合言葉)を他人に教えない、強固なパスワードを設定するなど、セキュリティ管理を徹底しましょう。
2. NFTにするデータを用意する
次に、NFTファッションとして販売するデータを用意します。NFTにできるファイルの形式は、マーケットプレイスによって異なります。たとえばOpenSea(オープンシー)では、以下の形式に対応しています。
- 画像:JPG、PNG、GIF、SVG
- 動画:MP4、WEBM
- 音声:MP3、WAV、OGG
- 3Dモデル:GLB、GLTF
どの形式を選ぶかは、NFTファッションをどう使ってもらうかによって変わります。動きを伴うデザインを表現したい場合は動画、アイテムを立体的に見せたいなら3Dモデルといった使い分けが可能です。
データを作成する際は、実物の制約を受けないデジタルだからこそ表現できるデザインを盛り込んだり、実物の商品をもとにCG化したりと、何を価値として届けるかを設計します。また、ブロックチェーンゲームやメタバース内でアバターが着用できる形式にするなら、ゲームの仕様にあわせてデータを作る必要があります。
3. マーケットプレイスを選んでウォレットを接続する
データができたら、NFTファッションを売買するためのマーケットプレイスを選びます。代表的なマーケットプレイスは以下の通りです。
- OpenSea:世界最大級のNFTマーケットプレイスで、誰でもアカウントを作って自由にNFTの発行や出品が可能です。日本語にも対応しています。
- Adam byGMO(アダム バイ ジーエムオー):日本のGMOグループが運営するNFTマーケットプレイスです。暗号資産だけでなく、日本円のクレジットカードや銀行振込でも決済できます。ただし、新規にNFTを出品するには事前のクリエイター申請と審査が必要です。
- Coincheck NFT(コインチェック エヌエフティー):国内の暗号資産取引所Coincheckが運営するNFTマーケットプレイスです。取り扱う商品は運営が承認したゲームなどに限定されており、取扱タイトルの数は2025年12月時点で26種となっています。
マーケットプレイスによって手数料や対応するブロックチェーン、決済方法などに違いはありますが、自社で企画したNFTファッションを発行して販売したいなら、利用者が多く対応サービスも豊富なOpenSeaが現実的な選択肢となります。
選んだマーケットプレイスでアカウントを作成したら、ステップ1で用意したウォレットを接続します。一度接続しておけば、以降はそのウォレットとマーケットプレイスを通じてNFTの発行や売買を行えるようになります。
4. NFTを発行する
マーケットプレイス上でファッションのデータをアップロードし、NFTとして発行します。この作業はミント(Mint)と呼ばれます。鋳造を意味する言葉で、デジタルデータをブロックチェーン上に登録し、唯一性をもったNFTとして新たに生み出すことを指します。
このとき、「ガス代」と呼ばれる、ブロックチェーン上で処理を行う際に支払うネットワーク手数料がかかる場合があります。ブロックチェーンには複数の種類があり、ガス代の支払いに使う暗号資産も、その金額も、選んだブロックチェーンによって異なります。たとえばイーサリアム(Ethereum)上ではETH(イーサ)、Polygon(ポリゴン)上ではPOLが必要です。手数料を抑えたい場合は、ガス代の安いブロックチェーンネットワークを選ぶと、OpenSeaなどでほぼ無料でNFTを発行できる場合もあります。
ブロックチェーンを選んだら、NFTの発行に必要な暗号資産を事前にウォレットへ入金しておきましょう。暗号資産は、国内の取引所で日本円から購入できます。
5. 販売条件を設定する
最後に、発行したNFTの販売条件を決めます。価格、販売方式(固定価格かオークションか)に加えて、ロイヤリティの設定も重要です。ロイヤリティとは、発行したNFTが二次流通で再販されるたびに、売上の一部が発行元に還元される仕組みです。たとえば、10%に設定しておけば、購入者どうしで転売されるたびに、その都度ブランドへ手数料が入ります。
ただし、ロイヤリティへの対応はマーケットプレイスによって異なります。OpenSeaの場合、希望する料率を設定はできるものの、再販時に保有者がそのまま支払うかを選べる「任意型」と、技術的な条件を満たして必ず支払われるようにする「強制型」の2種類があります。確実に収益化したい場合は、利用するマーケットプレイスの仕組みを事前に確認しましょう。

NFTファッションに取り組む際の4つのポイント
1. 価値を明確にする
NFTファッションを発行する前に、それを買う人が何を得られるのかを定めておきましょう。提供する価値が明確になれば、価格設定やマーケティングの方針を一貫させられます。
たとえば、デジタルのデザインそのものを価値の中心にするなら、表現の独自性や限定性で勝負することになります。実物の商品とのひもづけを価値にするなら、NFTを購入した人だけに届ける現実の体験を設計します。
2. コミュニティを育てる
SNSなどを通じて、ブランドのファンが集まるコミュニティを育てていきましょう。NFTファッションを発行するだけで終わらせず、見込み顧客やファンと継続的に関わる場を設けることで、ブランドに対する共感や愛着が育ち、自然な購入につながります。
商品の見た目だけでなく、ブランドが何を目指しているのか、NFTを持つとどんな体験ができるのかを、繰り返し伝えていくことが大切です。息の長い関係づくりを意識しましょう。
3. 法規制や税務の扱いを確認する
NFTファッションを事業として扱うなら、法規制や税務の扱いを事前に確認しておきましょう。確認を怠ると、思わぬ追徴課税や法令違反のリスクを抱えることになります。
主に押さえておきたいのは、次のような点です。
- NFT販売による売上の会計処理と税務
- 暗号資産で受け取った収益の会計処理
- 金融庁・財務局の登録を受けた暗号資産交換業者の利用
NFTや暗号資産に詳しい税理士や弁護士に相談し、自社のケースに即した対応を整えてから本格展開に進みましょう。
4. 詐欺やハッキングのリスクに備える
暗号資産を保管してあるウォレットや、NFTマーケットプレイスのアカウントを、詐欺やハッキングから守りましょう。代表的なリスクは、ウォレットのシードフレーズを盗もうとするフィッシングや、マーケットプレイス公式を装った偽メッセージです。たとえば、担当者が偽サイトでマーケットプレイスのログイン情報を入力してしまうと、発行したNFTファッションが抜き取られ、その価値が大きく下がってしまう恐れがあります。
主な対策は以下の通りです。
- NFTマーケットプレイスはブックマークから開く
- 不審なリンクは絶対にクリックしない
- 暗号資産の保有金額が大きくなったらハードウェアウォレットの導入を検討する
加えて、自社の公式アカウントを明示し、なりすましに注意を呼びかけることも、ファンを守るうえで欠かせません。
まとめ
NFTファッションは、ブランドにとって新たな収益源となるだけでなく、ファンとの関係づくりや、これまで接点のなかった顧客層との出会いをつくる手段でもあります。市場も拡大基調にあり、ブランド戦略の選択肢として検討する価値が高まっています。
取り組む際は、NFTファッションを通じてどのような価値を実現したいのかを決めておきましょう。そのうえで、ウォレットやマーケットプレイスといった基本の環境を整え、コミュニティの反応を見ながら展開していくのが現実的です。法規制や税務、セキュリティへの備えも忘れずに整えておきましょう。
NFTファッションに関するよくある質問
NFTファッションとは?
NFTファッションとは、衣服のデジタルデータを、ブロックチェーンの仕組みで唯一無二の資産として扱えるようにしたものです。
NFTとは?
NFTとは、正規の所有者や取引履歴などがブロックチェーン上に記録され、資産として保有できるデジタルデータのことです。
NFTファッションの作り方は?
- 暗号資産ウォレットを用意する
- NFTにする衣服のデータを用意する
- マーケットプレイスを選んでウォレットを接続する
- NFTを発行する
- 販売条件を設定する




