請求書を用いた取引では、取引先ごとに締め日や支払期日を設定することがあります。支払い期限をあらかじめ明確にしておくことで、取引先との認識のずれを防ぐことができ、自社の帳簿管理をしやすくなります。
支払い期限は、基本的に当事者間の合意によって設定しますが、取引内容や取引先によっては、法律上のルールが適用される場合もあります。
この記事では、請求書の支払い期限の決め方や一般的な支払期日、支払期日の書き方、法律上のルールを解説します。

請求書の支払い期限とは
請求書の支払い期限とは、請求した代金を取引先にいつまでに支払ってもらうかを示すものです。請求書には、その具体的な日付を「支払期日」として記載します。たとえば、2026年9月に発行する請求書の支払い期限を「翌月末」とする場合、実際の請求書には「支払期日:2026年10月31日」のように記載します。
支払い期限は、法律で請求書への記載が義務付けられている項目ではありません。ただし、支払期日についての認識のずれや入金の遅れを防ぐため、実務上は具体的な支払期日を記載しておくのが一般的です。
なお、「締め日」とは、一定期間の取引をまとめて請求額を確定する日です。たとえば「月末締め・翌月末払い」の場合、その月の末日が締め日、翌月の末日が支払期日となります。
一般的な支払い期限
請求書の支払い期限に一律の基準はなく、基本的には当事者間の合意によって設定します。締め日から支払期日までの期間は「支払いサイト」と呼ばれます。代表的な支払い期限は次のとおりです。
- 月末締め・翌月末払い(30日サイト):月内の取引を月末にまとめ、翌月末を支払期日とします。たとえば、8月31日に締めた場合は9月30日が支払期日です。
- 月末締め・翌々月末払い(60日サイト):月内の取引を月末にまとめ、翌々月末を支払期日とします。8月31日に締めた場合は10月31日が支払期日です。
- 請求書発行後30日以内など:単発やスポットの取引では、締め日を設けず、請求書の発行日や納品日を基準に支払期日を設定することもあります。
なお、30日サイトや60日サイトは締め日から支払期日までの期間を示すため、実際の取引発生から入金までの期間はさらに長くなることがあります。また、取適法やフリーランス法の対象となる取引では、受領日から原則60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める必要があります。一般的な支払いサイトとは異なるルールが適用されるため、注意が必要です。

請求書の支払い期限の決め方
自社の資金繰りから支払いまでの期間を確認する
まず、仕入れ代金や人件費、外注費などの経費が発生するタイミングを確認します。商品やサービスを提供してから入金までの期間が長いと、売上代金が入金される前に支払いが発生し、キャッシュフローを圧迫する可能性があります。
たとえば、外注費を翌月に支払う必要がある場合、売上代金の入金が翌々月末になると、その間の資金を自社でまかなう必要があります。支出と入金のタイミングを照らし合わせ、無理のない支払い期限を設定しましょう。
締め日や支払期日の基準を決める
継続的な取引では、「月末締め・翌月末払い」のように、締め日と支払期日をセットで決めます。取引件数が多い場合は、一定期間の請求をまとめることで、注文処理から請求、入金までの流れを管理しやすくなります。
一方、単発の取引では締め日を設けず、納品日や請求書の発行日、検収日などを基準に支払期日を設定することもあります。検収日を基準とする場合は、納品された商品や成果物を確認し、問題なく受け入れられた日を起点として支払期日を設定します。
取引先と事前に支払い条件を合意する
支払い条件は、最初の請求書で初めて伝えるのではなく、見積書や契約書などで取引開始前に双方で確認し、合意しておきます。
取引先から別の支払いサイクルを求められた場合は、自社の資金繰りへの影響を確認したうえで調整しましょう。
また、取引量が増えた場合や、入金までの期間が負担になってきた場合は、支払い条件を見直すことも必要です。継続的な取引では、契約更新などのタイミングで支払い条件についてあらためて相談するとよいでしょう。

請求書の支払い期限の正しい書き方
請求書の書き方で支払い期限を記載する際のポイントは、具体的な日付を明記することです。「支払期日:2026年10月31日」のように記載し、「速やかに」「翌月末まで」「請求書受領後30日以内」といった曖昧な表現は避けましょう。
また、支払期日が土日祝日や金融機関の休業日にあたる場合は、翌営業日とするのか、前営業日とするのかをあらかじめ取引先と決め、請求書にもその扱いを記載しておきましょう。
記載箇所に決まりはありませんが、請求金額や振込先口座など重要な情報が集中している部分に記載すると、見落としを防ぐことができます。たとえば、次のようにまとめて記載します。
- 支払期日:2026年10月31日
- 備考:金融機関休業日の場合は翌営業日
前払いや分割払いの場合
前払いや分割払いを設定している場合は、それぞれの請求額と支払期日がわかるように記載します。着手金、中間金、残金など、支払いのタイミングごとに請求書を分けて発行する方法が一般的です。
たとえば、契約総額100万円を3回に分けて請求する場合は、次のように設定できます。
- 着手金:30万円(支払期日:2026年9月30日)
- 中間金:30万円(支払期日:2026年10月31日)
- 残金:40万円(支払期日:2026年11月30日)
各請求書には、「Webサイト制作費(着手金)」「契約総額100万円のうち第2回分」のように、請求内容がわかるように記載しましょう。
また、1枚の請求書に契約総額、各回の請求額、支払期日をまとめて記載する方法もあります。どちらの場合も、支払い回数や金額、支払期日は見積書や契約書であらかじめ取引先と合意しておきます。

請求書の支払い期限に法律上の決まりはある?
一般的な企業間取引では、「請求書の発行から30日以内」のように、支払期日を一律に定める法律上のルールはありません。基本的には、取引当事者間の合意によって支払い条件を設定します。
ただし、取引内容や取引先によっては、支払期日について法律で一定のルールが定められている場合があります。代表的なものを紹介します。
取適法:受領日から原則60日以内
取適法(改正下請法)は、企業間の一定の委託取引で、受注側の利益を保護するための法律です。従来の下請法が改正され、2026年1月1日から「取適法」に名称が変更されました。すべての企業間取引が対象になるわけではなく、取引内容と発注側および受注側の資本金または従業員数をもとに適用の有無が決まります。
自社の取引が対象になるかは、公正取引委員会の「取適法簡易診断ツール」で確認できます。
対象となる取引では、発注側は、商品や成果物などを受領した日から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める必要があります。支払期日の起算点は、原則として請求書の受領日や検収完了日ではなく、商品や成果物を受領した日です。検査や検収に時間がかかる場合も、その期間を含めて60日を数えます。
60日を超える支払期日を当事者間で合意した場合でも、そのまま認められるわけではありません。
フリーランス法:受領日から原則60日以内
フリーランス法は、企業などから業務委託を受けるフリーランスの取引条件を適正化し、就業環境を整えるための法律です。
このとき対象となる「フリーランス」は、従業員を使用していない個人事業主や、代表者以外に役員がおらず、従業員も使用していない法人を指します。企業などの事業者から、物品の製造や情報成果物の作成、サービスの提供などを業務委託として受ける取引が対象となります。消費者から直接依頼を受ける場合や、自分の商品を販売する場合は対象外です。
対象となる業務委託では、発注側は、商品や成果物などを受領した日から60日以内のできる限り短い期間に報酬の支払期日を定め、その期日までに支払う必要があります。この60日の起算点は請求書の発行日ではなく、給付を受領した日です。
政府契約の支払遅延防止等に関する法律:原則30日以内(工事は40日以内)
国を相手方とする契約には、「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」が適用されます。国が検査などを終え、適法な支払請求を受けた日から、原則30日以内、工事代金の場合は40日以内に支払期日を定める必要があります。
国との取引では、納品日や請求書の発行日ではなく、国が適法な支払請求を受けた日が支払い期間の起算点となる点に注意しましょう。
業種によっては別の法律が適用される場合も
取適法やフリーランス法とは別に、業種によって支払期日に関するルールが定められている場合があります。たとえば、建設工事の下請取引には建設業法が適用されます。
特殊な業種や取引形態にあたる場合は、自社の取引に適用されるルールも確認しておきましょう。

請求書の支払い期限を設定するときの注意点
1. 取適法の60日ルールを確認する
取適法の対象となる取引では、発注側は原則として商品などを受領した日から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を設定する必要があります。取引先から提示された支払い条件が、このルールに沿っているか確認しましょう。
2. フリーランス法の60日ルールを確認する
フリーランス法の対象となる業務委託でも、発注側は原則として給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間に報酬の支払期日を設定する必要があります。フリーランスとして業務を受注する場合は、提示された支払い条件を確認しておきましょう。
3. 土日祝日にあたる場合の扱いを決める
支払期日が土日祝日や金融機関の休業日にあたる場合は、前営業日と翌営業日のどちらを支払期日とするかをあらかじめ決めておきます。決めた内容は、契約書や請求書にも反映しましょう。
4. 見積書や契約書と支払い条件をそろえる
請求書に記載する支払期日は、見積書や契約書などで合意した条件に沿って設定します。書類ごとに支払い条件が異なると、確認に手間がかかり、支払いの遅れにつながる可能性があります。
5. 支払い条件を変更するときは事前に取引先の合意を得る
継続取引の途中で支払い期限を変更する場合は、一方的に変更せず、事前に取引先と合意しておきます。変更後の条件は、契約書や見積書などにも反映しておきましょう。
6. 余裕をもって発行する
請求書の発行が支払期日の直前になると、取引先の承認や振込手続きが間に合わない場合があります。締め日後はできるだけ早く請求書を発行し、支払い手続きに必要な期間を確保しましょう。
7. 取引先の請求書提出期限を確認する
取引先によっては、「毎月5日まで」など、請求書の提出期限を設けています。提出が遅れると、入金が次回の支払日まで持ち越される場合もあるため、取引開始時に締め日や支払期日とあわせて確認しておきましょう。
まとめ
請求書の支払い期限は、取引先との認識のずれを防ぎ、入金予定を管理するためにも明確に設定しておくことが大切です。一般的には「月末締め・翌月末払い」などの支払いサイクルが使われていますが、自社の資金繰りも踏まえ、取引先と合意したうえで支払期日を決めましょう。
請求書には具体的な支払期日を記載し、土日祝日の扱いや、見積書や契約書との条件の違いにも注意が必要です。また、取適法やフリーランス法など、取引内容によって支払期日に関する法律上のルールが適用される場合もあります。自社の取引に適用されるルールを確認し、無理なく継続できる支払い条件を設定しましょう。
請求書の支払い期限に関するよくある質問
請求書の支払い期限は何日が一般的?
一般的な取引では、「月末締め・翌月末払い」の30日サイトが広く採用されています。「月末締め・翌々月末払い」の60日サイトもありますが、取適法やフリーランス法の対象となる取引では、受領日から原則60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める必要がある点に注意が必要です。
請求書の支払い期限を1週間後にしても問題ない?
一般的な取引では、当事者間で合意していれば、請求書の発行から1週間後を支払い期限に設定することもできます。ただし、期限が短すぎると取引先の承認や振込手続きが間に合わない可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
支払期日が土日祝日の場合はどうすればいい?
翌営業日または前営業日のどちらを支払期日とするかを、あらかじめ取引先と決めておきます。請求書にも「金融機関休業日の場合は翌営業日」のように記載しておくと、支払期日の認識のずれを防げます。




